弥生の塩﨑です。
2015年(平成27年)12月16日発表された「平成28年度税制改正大綱」。中でも一番の目玉は、「消費税」ですね。消費税率10%については、前回記載したとおりです。今回は「インボイス(適格請求書)」に関することを紹介していきたいと思います。
インボイス写真

インボイス(適格請求書)ってなに?
軽減税率に合わせて「インボイス(適格請求書)」という言葉も聞いたことがありませんか?インボイスとは、納税額を正しく計算するために必要になる請求書などのことです。
2017年(平成29年)4月1日以降、卸売業や飲食店・小売業では、消費税率10%の商品と消費税率8%の商品が混在することとなります。この軽減税率により、複数の消費税率を扱うようになると、お客さまに対して正しい税率で販売するのはもちろんのこと、消費税の納付額を正確に計算する必要も発生します。
例えば、販売したい商品が消費税率8%なのか、10%なのかをレシートなどで明示しなければなりません。その際、事業者に交付する請求書がインボイス(適格請求書)です。
このインボイス(適格請求書)は、販売した側では控えを保管し、購入した側では原本を保管します。そして、保管したインボイス(適格請求書)をもとに消費税の納税額を計算することとなります。
インボイス

インボイス(適格請求書)と現在の請求書と主な違いは、次の2つです。

1)事業者ごと割り振る登録番号を明記する
インボイス(適格請求書)を発行出来る事業者は、2019年(平成31年)4月1日以降、税務署に「インボイス(適格請求書)の発行ができる事業者」として登録をしなければなりません。その際、登録番号が交付され、事業者の氏名や名称がインターネットを通じて公表されます。一度登録すると、登録取り消しの届出が行われない限り、売上高が1千万円以下であっても免税事業者になることはありません。

2)商品ごとに税額や税率を記載する必要がある
インボイス(適格請求書)に「商品ごとに税額や税率」を記載するには、各企業が設備投資をしなければならなかったり、今まで以上に事務負担が増えたりと、企業が多くの負担を負わなければなりません。そのため、インボイス(適格請求書)の本格導入までの間、経過措置が設けられます。

インボイス(適格請求書)の本格導入までの経過措置
インボイス(適格請求書)の本格導入までの4年間(2017年(平成29年)4月1日から2021年(平成33年)3月31日まで)、請求書などの発行方法と売上げや仕入れにかかる消費税額の計算方法の2つに経過措置が設けられます。

1)請求書などの発行※1
軽減税率対象商品を販売する場合には、現在の請求書に次の2項目を追加しなければなりません。今回の税制大綱では、この2つの項目を記載した書類を適格簡易請求書とよんでいます。
(1)軽減税率対象商品の販売であること
(2)税率の異なるものごとに合計した販売価格
システムから発行する請求書の場合は、どうしてもシステム投資が発生します。また、手書きの請求書であっても、毎回必要事項を付け加えなければならず、事務負担が増加します。今後のことを見据えて、先にインボイス(適格請求書)に対応したシステムを構築することも1つの手なのかもしれません。
適格簡易請求書

2)売上げや仕入れにかかる税額の計算方法
売上げや仕入れに係る税率の異なるごとに区分して消費税額を計算することが原則ですが、税率の異なるごとに区分することに困難な事情があるときは、次の方法で、売上げや仕入れにかかる税額を計算できることになります。

(1)課税売上高が1,000万円超、5,000万円以下の事業者
イ)    売上に係る税額※1
(イ)連続する10営業日の消費税のかかる課税売上高に占める軽減税率対象売上の割合
(ロ)卸売業及び小売業に係る課税仕入れ等に占める軽減税率対象売上のみに要するものの割合
(ハ)軽減税率対象商品を主として販売している事業者が、割合の算出について困難な事情があるときは、50%

ロ)仕入れに係る税額※2
(イ)卸売業および小売業に係る課税売上高に占める軽減税率対象売上の割合
(ロ)上記(1)イ)(ロ)の割合

(2)課税売上高が5,000万円超の事業者※2
上記(1)イ)および(1)イ)(ロ)と同じ方法により計算することができます。

※1 2017年(平成29年)4月1日から2021年(平成33年)3月31日までの期間が対象
※2 2017年(平成29年)4月1日から2018年(平成30年)3月31日の属する課税期間の末日までの期間が対象

インボイス(適格請求書)の本格導入後 課税事業者が免税事業者から商品を仕入れ等した場合

インボイス(適格請求書)が本格導入した後は、インボイス(適格請求書)をもとに消費税の納税額を計算します。

課税事業者が、インボイス(適格請求書)を発行できない免税事業者から商品を仕入れた場合は、一定の事項が記載された帳簿および請求書等を保存している場合に限り、購入した商品に係る消費税相当額に次の率を乗じた金額を仕入税額とすることができます。
1)    2021年(平成33年)4月1日から2024年(平成36年)3月31日まで  80%
2)    2024年(平成36年)4月1日から2027年(平成39年)3月31日まで  50%

まとめ
2017年(平成29年)4月1日からは消費税率10%と軽減税率が、2018年(平成30年)9月30日には転嫁対策措置法により認められていた税抜表示の廃止、さらに2021年4月からはインボイス(適格請求書)の本格導入など、今後数年間は正に“消費税の年”となりそうです。