先日公開した、「2015年春、岩手県陸前高田市 事業者インタビュー 復興の今」、
ムービーでは一部しかご紹介できなかったので、このブログで、事業者の方々にお聞きした想いを、紹介していきたいと思います。今回は、ラフぷる~ん石鹸や可愛らしい雑貨を販売するLaugh代表 菅野恵さんです。
東日本大震災の日は、東京で仕事をしていました。実は陸前高田の事はそんなに心配していなかったんです。あの辺りの地域は結構地盤が強いんです。だから、「そんなに被害はないだろう」、「津波も数十センチぐらいだろう」って思いながら仕事をしていました。帰宅してテレビをつけたら「えっ!」って。これが本当に現実なのかって疑ったぐらいです。本当は、すぐにでも陸前高田に帰りたかったんですが、交通機関やガソリン不足などもあってすぐは帰れませんでした。2週間程度して落ち着いてから兄と一緒に戻ったんですね。実際戻ってみると、既に道路は綺麗になっているんですよ。だけども、道路の周りはガレキが山住になっていて、車も渋滞しているし、自衛隊の方がたも色々活動してくださっている。夢なのか現実なのか分からないぐらいすごくて、何がなんだか本当に分からなかったですね。
陸前高田から東京に戻ると、私の周りでは当たり前のように今までと同じ時間が流れていました。私の故郷では、ライフラインさえ復旧していなかったのに…って。仮設住宅に住めない人も大勢いるのに。当時は、すごいギャップを感じていました。東京で仕事をしていても、ずっと被災地の事を考えてしまっていて、何か自分にできたらいいのになぁって。色々考えたんですが、Uターンして起業することにしたんです。
陸前高田にお店を出すなら「みんなの笑顔が集まるようなお店、楽しくなる商品が集まっているお店」にしたいって思ってLaugh(声を立てて笑う)とつけました。起業したばかりのころは、商品もどこから仕入れたらいいか分からず、とにかく周りのお店で「いいなぁ」って思った商品のタグ裏をチェックして、メーカーを調べインターネットで検索し、カタログを送ってもらって、仕入れの交渉をしていました。何もかも一からのスタートでしたね。でもこの作業は、私は好きだったのでそんなに苦ではなかったです。
オリジナルの物を作ってみんなに届けたいという思いが起業を考えたときからあったんです。陸前高田市ゆかりの品を使えば、地域の事も知ってもらえるじゃないですか。「陸前高田市の物を利用したオリジナル商品を販売すること」は、事業計画にも描いた1つの通過点だったんですよ。
高校時代からの友人から「ぶどうの皮が残る。そのまま捨てる」って聞いたんです。捨ててしまうものを再利用することも、1つの地域貢献ですよね。せっかくなら地元の葡萄の皮を使った石鹸を作ろうって考えました。ママ世代をお店のコンセプトにしているので、石鹸なら出産祝いとかで贈ることもできるじゃないですか。元々石鹸も好きでしたし、誰にでも使えるものですし。最初は練り石鹸を考えていたんですが、予算や期限とかいろいろなものが重なって、固形石鹸だとごく普通の当たり前の石鹸になってしまう。せっかく陸前高田の品を使って作るものだし、こだわりたいって思ったんです。その時メーカーさんが「最近ぷるぷる石鹸が出始めましたよ」って教えてくれました。柔らかい感触も珍しいんです。メーカーさんの一言があったから、「ラフぷる~ん」ができたんですよ。
コンテナの絵は友人が書いてくれたんですが、あえて未完成のままで終わらせてもらったんですよ。完成してしまうと、その先が無いじゃないですか。未完成のままで、これからも私は成長していく、Laughが成長するって思いも込めてあの絵にしてもらったんです。今は雑貨を扱っていますが、将来はカフェとかチャレンジショップとか、色々なものが集まったお店にしたいですね。陸前高田市は、本当に若い人が減っているんです。どこの地域も一緒だと思うんですけれども、働く場所を増やす必要があるなって思っています。Iターン、Uターンを増やし、スキルの高い人を呼び、地域のスキルの底上げをすることも今もの陸前高田に必要な事だと思うんです。そういった意味でLaughが働く場所を提供できたらいいなぁと思います。雇用を生んで、地元の食材を扱って、それを日本に発信したい。Laughから生まれる笑顔を陸前高田市にプレゼントしたいと思っています。