弥生の塩﨑です。事業をしていると、必ず増えていく領収書や請求書…。
「データで保存できたら、場所も取らなくて便利なんじゃない??」
と思ったことがありませんか?実は、領収書や請求書をスキャナー画像で保存できる「e-文書法」(*1)という法律があるのです。この制度は「スキャナ保存制度」なんて呼ぶこともあるので、一度ぐらい聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
今回の平成27年税制改正で、その「スキャナ保存制度」が緩和されました。これにより、個人事業主やフリーランスの皆さんでも利用できるサービスが、今後続々と出てきそうな予感がします。という事で、今回はこの「スキャナ保存制度」についてご紹介します。
(*1)法律の名称は、「民間事業者等が行なう書面保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」および「民間事業者等が行なう書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」。
スキャナ保存制度とは
領収書や契約書、見積書や請求書と言った書類は、紙で7年間(*)保存することが決められています。民間企業は、このルールに則り税務書類を紙で保存しています。この保存に係る費用は約3000億円/年なんだそうです。ただ単に書類の保存だけです。
IT化が進む現代では、紙で保存すること自体がナンセンス。時代の流れに合わせスキャナー画像の保存を認めた特例的な法律「e-文書法」が、平成16年に制定されました…。が、利用するための要件などが厳しく、2014年6月末現在で103社しか利用していない、そんな法律でした。今回の税制改正で、この要件の緩和が実施されています。
保存できる書類が拡大しました
今までの制度では、3万円以上の契約書や領収書のスキャナー画像による保存ができませんでした。そのため、経理処理する際に「これは、スキャナー保存ができるもの」「これは、スキャナー保存ができないもの」と区別する作業が発生していたのです。
今回の税制改正により、下記の図の通り、3万円以上の契約書や領収書もスキャナー画像で保存することができるようになりました。つまり、経理処理に必要なほぼ全ての証票類をスキャナー画像で保存可能になります。上手く利用すれば業務量だけでなく、書類の保管スペースや保管料金なども削減できそうですね。
不正防止要件が緩和されました
今までの制度で一番の課題だった、不正防止要件も緩和されました。
以前は、領収書や請求書の改ざんができないよう、契約書や領収書には“電子署名”と“タイムスタンプ(*2)”を、その他の書類には”電子署名”を付ける必要がありました。今回の税制改正により、どちらの書類もタイムスタンプのみで対応が可能になっています。
現在、スキャナーを製造している多くの企業では、「スキャナ保存制度」に必要なタイムスタンプができるよう開発検討を行っているようです。製品開発が進めば、近い将来スキャナー画像すべてに、タイムスタンプが付くなんて時代がきそうですね。
(*2)一般的には、作成したファイルやフォルダなどに記録されている、そのデータの作成日時のことをいいます。
その他の主な改正点
契約書・領収書を除く書類については、大きさに関する情報を保存しなくてよくなったり、カラーではなく白黒で保存できるようになっています。
いつから利用できるのか
この新制度は、平成27年(2015年)9月30日以降に最寄りの税務署に承認申請書を提出した方から対象となります。ただし、平成27年(2015年)9月30日に承認申請書を提出しても、その日から「スキャナー保存」出来るわけではありません。スキャナ保存制度が利用できるようになるのは、申請の3か月後からとなります。
例えば、平成27年(2015年)9月30日に申請書を提出したらならば、「スキャナー保存」できるのは、平成28年(2016年)1月1日からという事になります。この点注意が必要ですね。
なお、「スキャナー保存」は、原則として課税期間の初日からスタートすることとなります。詳しくは、お近くの税務署にお問い合わせください。
スキャナ保存制度を利用するための最低限の条件
申請だけでは「スキャナ保存制度」を利用することができません。
正しい経理処理が行われるための決まり(規程)が必要になります。そして、その規程が正しく運用されているかチェックする体制もなければなりません。まずは、規程作りが必要ですね。
他には、ログ管理などもしなければならず、これらに対応したシステムも必要となります。
さらに、ブックリーダーのように上から照射するものや、持ち運び可能な小型スキャナー、スマートフォンなどによるデータでは、この制度を利用できないため、制度に適応したスキャナーを購入する必要があります。今後、スマートフォンのデータがそのまま保存できるぐらいまで、この法律が進化すると、更に使い勝手の良いものになりますね。
最後に
最近は、システム開発会社やスキャナー製造会社も「スキャナ保存制度」に注目しています。事業者の皆さまが困らないよう、規程やマニュアルなどの準備や、ログの管理ができるシステムの提供なども検討されているようです。今後、この「スキャナ保存制度」を取り巻く様々な製品やソフトウェアが出てくることも間違いないでしょう。
「スキャナ保存制度」を利用できるよう、弥生でもFacebookやブログでご紹介していきます。皆さまも、日々アンテナを張って情報収集してくださいね。